全然覚えてないんだよね」
「成程」
「てな訳で、じゃ」
そう言い残すと、また目を瞑り五分としない内に寝息を起てていた。その様子に呆れながらも、風神は、直哉の横に腰を下ろし座った。
直哉の顔を覗いて、風神は軽く頭を撫でた。
「・・・時が経つのは本に、速いの」
風神が呟いた言葉は、風に流され誰の耳に届く事なく消えていった。

風が強く吹いた気がした。耳元では強く吹く風により草木がなびき、音色を奏でる。目開けるとそこに一人の少女が立っていた。
『初めまして』
直哉は驚いて、姿勢を正した。
声を掛けてきた少女は、直哉より少し年上で、高い訳ではないが、響く柔らかい声だった。
『君はこの村の子?』
少女は、風でなびく長い髪を耳に掛け、優しく微笑んだ。少女はとても美しく、雪美も綺麗だが、それとは別格の雰囲気を漂わせていた。
直哉は魅とれているのを気にも止めず、少女は話を続けた。
『君の名前は?』
あっ、あの直哉です
『!生意気な事言うのね、わかったわ、私は相原かず子よ』
えっ!
『?カゼ?変わった名前ね』
あの?
直哉とかず子と名乗った少女とは、視線が合っているのに何故か会話か噛み合わなかった。
『じゃ、また遊びに来るね』