「そうだよ、孫が来るからって、車出して欲しいって頼まれてな、この村じゃ車がないと不便だからな」
そう言うと、運転席の男は笑った。
「・・・」
「おいおい、まだ疑ってんのかよ!」
直哉が黙って見てると、男はわざとらしく肩をすくめた。
「そんなに疑うんなら歩っていきな、かずばぁん家はあそこに見える山の麓にある、こっから大体一時間は掛るな」
「・・・お願いします」
直哉は結局、この暑さには敵わなかったのだった。

クーラーは付いて無かったが、窓を全開にしかていたので、心地よい風が吹き込んできた。
運転している男は、クマじぃと呼ばれていて、直哉と同い年の息子がいるなど色々な話を喋っていた。
先ほどは砂利道の振動に酔っていたが、今回は風が当たるせいか、全く気持ち悪くならなかった。それに、クマじぃの話が面白くて、あっと言う間に車は、祖母の家に着いた。
祖母の家は、二階が無く平屋のように拡がり、前の庭にニワトリが五〜六羽ぐらいが放たれていた。
車を降り、辺りを見渡すと、玄関から一人の老人が現れた。
「おぉ、直哉!久しぶりだね、見ない内に大きくなって」
頭に巻いた手ぬぐいを取り、皺を深くし老人は直哉に笑顔を向けた。