嫌われたりしないだろうかと、心配したのがバカみたいに、あっさり受け入れてもらえ、少し呆気にとられていた。
村人も雪美が帰ってきたと解ると、気を利かせて帰っていった。
今まで言わないで我慢していた自分がバカみたいで、雪美は苦笑いしたが、きっとこの我慢は無駄じゃないのかなと、空を見上げて思った。
その時雪美に優しく涼しい風が吹いた。


「って感じに私を助けてくれたの、で、その後にその少年が『風神』様だって解ったのよ」
「はあ・・・」
一通り聞いて、良い話だなぁとは思ったが、その『風神』とやらの存在に付いては理解は出来なかった。
「信じられない?」
「いや!そう言う訳ではなくて、その少年に聞いたんですか?」
「んん、彼とはそれっきりで、もう会ってないっというか、会えないの」
「会えない?」
直哉は首を傾げて、氷が溶けて薄くなった麦茶を一口着けた。
「そうなの、あの日からねもう一度も会ってないないのっていうか、見えないの。その後お礼を言いたくて、祠に会いに行ったんだけどね、もう見えなかったのよ」
そう言うと、雪美はグラスに目線を落とした。
太陽の陽射しもピークを迎え、外ではせみたちの鳴き声が大きく響いていた。