なんとなく、そこに足を踏み入れると先には小さな祠があった。
「・・・」
話には聞いた事があったが、祠を見たのは初めてだった。
この村の名前の由来にもなった、風神様を奉った祠は、この村にとっての一番の大事にされている神様だった。不思議な事にこの村は、夏は涼しい風が吹き、冬は気温より暖かい風が吹く。そして、台風が来ても強い風が吹かず、農作物にとって良い環境なのだった。それも全て風神様のお陰と、村人に崇められていた。
「久しい訪問者じゃな」
「!!」
後方から少し高い少年の声が聞こえ、雪美は驚いて後ろを振り向くと、そこには、着物のような物を着た少年が立っていた。
「!!誰!?」
「人に名を聞く時は、まず自分から名乗るもんじゃろ」
少年は鼻を鳴らした。
「?なんだ泣いていたのか」
雪美の赤くなった目を見て、少年は言った。
「なっ!泣いてない!」
少年に顔が見えない様に、雪美は背中を向けた。
「何を意地張っておるんじゃ?」
「意地なんか、張ってません!」
「?それを意地と言うのでは?」
「うるさいな!」
雪美はイラつき、袋を持ち直すと、今来た道を戻った。
「素直になるが吉じゃよ」