二人になった当初は良く色々な話をしていたが、母親が仕事に本格的に復帰してからは、忙しそうであまり話せなかったのも重なり、それから段々と話す事が無くなってしまったのだった。

「・・・あちぃ」
クーラーが効いていた車内とは真逆に外は暑かった。太陽は昼を過ぎ、少し西に傾き始めていたが、陽射しに衰えは全く感じなかった。
バスから降りた少年は、『ふうじん村』と書かれた錆びれたバスの停留所に一人ぽつんとたっていた。
背後には、木々が立ち並びせみ達が大合唱を繰り広げていた。
空を見上げると真っ青な青空に、キレイな入道雲が浮かんでいて、田んぼには苗植えが終わり、青葉が拡がっていた。
「おう!」
ぼけぇっと風景を見ていた少年の前に一台の軽トラックが止まった。
「お前が直哉か?」
小さい運転席に大きな体をギュウギュウ詰めにし、豪快な声を挙げて少年に問いかけた。
「あなたは?」
直哉と呼ばれた少年は、警戒心丸出しで問い返した。「俺は、かずばぁに頼まれて迎えにきたんだよ」
「カズバァ?」
直哉はあからさまに疑いの目を向けた。
「あぁ、かず子の事だよ、かず子でかずばぁ」
「かずこ・・・!おばぁちゃん?」