「あちい」
太陽が登りだすと、それに比例して気温も上がりだし、セミたちも大合唱を始め、暑苦しさ倍増だった。
「どうしよ」
雪美の家の前に着いたのはいいが、玄関にはチャイムがなく、困っていると急に玄関が開いた。
「いらっしゃい」
「あっ、はい」
そこに立っていたのは、雪美だった。
「よく分かりましたね」
「部屋から、直哉くんが見えたんだけど、中々来ないなぁって思って」
「すみません、チャイムが無くてどうしようかなって」
「あぁ、そうか!いいんだよ、この村は鍵掛ってないから、勝手に入っちゃって」
「はぁ」
本当に玄関に鍵を掛けないし、それどころか戸を開けっぱなしにする始末。これで大丈夫なのか、不安に思う直哉だった。
「さ、上がって」
「お邪魔します」
玄関を上がると、廊下があり、その奥の部屋に通された。
「どうぞ、座って」
「はい」
通された部屋は、戸が開け広げられ、西向きなため日陰になり、涼しい風が吹き込んできた。
「私の部屋より涼しいから、ここの方がいいかなって、涼しいでしょ」
コップに氷と麦茶を注ぎ、直哉の前に置いた。
「はい」
むし暑くても、雪美さんの部屋ならと思いながら、直哉は返事をした。