蛍の光り自体は小さいのに、それが数多くなるとま、その美しいさに圧倒され、息をするのも忘れてしまいそうだった。
「・・・ごほっ」
「大丈夫!?」
「すみません、余りにもすごかったので」
直哉は口を半開きで、一生懸命に見てたので唾が気管に入りむせこんだ。
「ふふ、気に入ってもらえたかな」
雪美が直哉の顔を覗き込み、声を掛けた。
「はい!本当にすごいですよ!」
それから小一時間、直哉は蛍の光りに、瞬きも惜しんで魅入っていた。
あまり瞬きをしていなかったので、目が痛く直哉は目頭を押さえた。
「大丈夫か?」
「てか、見すぎだろ」
優と哲が呆れ声を掛けてきた。
「うっさい!初めてですごかったんだよ!」
都会じゃ、殆どの川が人工的に構成されているため、魚が住んだとしても、蛍はムリで、きっと蛍を生で見たのは、直哉のクラスで自分だけだと思った。
「すごかった、本当にすごかったんだ・・・」
直哉は目を瞑ると、先程見た光景を思いだす。
小さな光りが、ゆらゆら揺れて飛び回る景色は息が止まるくらいの美しさだった。
「すごく気に入ってくれたみたいで、こちらも嬉しいわ」
雪美は、直哉に向き直り笑顔を向けた。
「じゃ、スイカ食べよっか!」