「元に戻ることは出来ない」
もう、戻らないと決めた──。
忘れてくれ。
俺のことを嫌いになってくれ……。
また踵を返した俺に、小松は言った。
「私達、いつか会った事があるの……?」
ドクン、と心臓が跳ねる。
まさか思い出したのか?
だが、小松の口振りからして、それはなさそうだ。
「山崎は覚えているんじゃないの?」
「──思い出さなくていい」
「え……?」
もういい。
敵同士だが……お前はそのまま、あの時代に帰ればいい。
「お前は、知らなくていい。そのまま未来に戻り、幸せになった方がいい……」
そう言い捨てると、俺は今度こそ、その部屋から出たのだった。