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「……ねぇ烝君?隠れんぼしよう?」
その後、俺は両親の目を盗んで、小松家へと足を踏み入れた。
気になっていたんだ……泣いていないか。
もう、泣いてほしくないと、もしも泣いていたのならその涙を自分の手で止めたいと、子供ながらも思っていた。
女の子は、“芳乃”と名乗った。
芳乃は、最初こそは俺に怯えていたが、次第に笑顔を見せるようになっていった。
だが、服はぼろぼろで、顔色も悪く、食料などないことが瞬時に分かる。
だから、家からこっそり持ち出した握り飯や団子を、俺は芳乃にあげた。
芳乃は何でも、美味しい美味しいと言って食べてくれて、見ているこっちまでが幸せになってきた。
それなら、もっと芳乃のために、何かしてあげたい。
もしも俺が強くなるのなら、それは芳乃のためだ……と、次第にそう思うようになっていった。
「あぁ……いいよ」
「やったぁ!じゃあ私が鬼ね~」
芳乃は無邪気な笑顔を浮かべて、たたたっと駆けて行くと、影の中にしゃがみ込み数を数え始めた。