……は?


「その子犬の?」

「うん。お願い。」


さのひなこはウルウルとした目で俺にお願いしてくる。



…その目やめてくれ。


「探してあげたいけど…、俺迎え行かなきゃ」


早く行かないと太陽が待ってる。



「わかってる!弟くんのお迎えのあとで全然いいから!!神崎く〜ん!一生のお願い!神崎くんのためなら何でもするから!」



さのひなこは俺に詰め寄る。



「そこのハンバーガー奢ってあげるし!神崎くんの弟さんにおもちゃ買ってあげてもいいし!宿題でもそうじでもパシリでも何でもする!だからお願い!この子をほっとけないの〜〜!!」



……ち、近い。

さのひなこの顔が至近距離で

心臓が乱れて行く。



「………」


どうしよう。


いつも通り冷静さを保って貫き通すか


さのひなこにカッコつけるか。






…俺の天秤はさのひなこにカッコつけるほうに傾いた。