姉はやっぱり8年前の事を気にしてるんだ。当時超人気カリスマ読者モデルだった姉は、自分のストーカーのせいで妹のあたしを傷つけてしまった、と悩んでるのを知ってる。


そんなの気にしなくていいのに。あれは姉が悪いんじゃない。単にキモイロリ男が勝手な思い込みで執着してただけで……。

あたしの傷は治らないけど、別に好きな人なんて作らないから気にしなくていいのに。

あたしは地味に生きてく。あんなふうに執着されるくらいなら、空気で十分だ。誰かを傷つけるなんてしたくない。


――自分が十分に傷ついて、痛くて怖くて苦しい思いをしたから。

事件が起きた夜が怖くて、眠れなくなった。引きずり込まれた人混みに行けなくなった。人影にさえ怯え、パニックになり過呼吸の発作を何度も起こした。

そんな困ったあたしを、母と姉と友達の鈴華は暖かく包み込み守り支えてきてくれたんだ。仕事が忙しいのに母は一年仕事を休み、家にいてくれた。姉も色々と持ってきてお話をしてくれた。鈴華は勉強を教えてくれた。

みんながいてくれたからこそ、今のあたしがあるんだよ。