――ケイヤクハナサレタ――



「えっ?」


男性の声が聞こえた気がしてきょろきょろと見回すけど、いるはずがない。うちは母子家庭であたしと姉と母の3人だけなんだから。


「よく見たら、変わった種類ね。こんなに綺麗なブロンド見たことないわ。でも、飼うならリボン着けた方が可愛いよ」


姉は銀色の猫の前にしゃがむと、鈴をつけた赤いリボンを猫に着けようとしたらしい。


「フギッ!」

「痛っ!」


けれど銀色の猫は牙を剥き、姉の手に容赦なく噛みついた。


「ご、ごめん! お姉ちゃん」

あたしはすっごく驚いた。だって、今までどんな動物も姉を好く事が当たり前だったのに。

この猫は何が気に入らなかったのか、フゥ~と未だに姉を威嚇してた。それでも姉は素早くリボンを結び……ってスゴい根性だ。リボン可愛いけど。


あたしが慌てて救急箱を開くと、すっかり支度を終えたお母さんがアドバイスをくれた。


「傷はきちんと洗って薬を塗っておきなさい。動物につけられた傷は甘くみちゃいけませんよ」