「あの声は本多さんかな。あれで通算何十発目だ、母さんに殴られたの。スゲー根性だ」

母さんも大変だ、とのたまう姉はいかにも可笑しそうにケタケタと笑う。


「お姉ちゃんだってファンとかスゴいじゃん。最近はマスコミだって追いかけてくるし。大丈夫なの?」


昔の事件はあたしだけじゃない。姉の生活にも暗い影を落とした。あのせいで姉は大好きな仕事の読者モデルを辞めなきゃいけなかったんだから……。


「あ~、大丈夫。あたしは幾らでも抜ける手段があるからさ」


なんて言う姉は、母に続いてあたしの頭を撫でニッと笑う。


「あんたも知ってるでしょ。あたしは武術も習ってんだから、下手な男には負けない。
それよりはあんたに悪いと思うよ。あたしのせいでマスコミに追いかけられたりしない?」


「ううん、大丈夫。マスコミどころか誰の目にも留まらないようなスキルを身につけたから」

「なんだそりゃ?」


姉が目を瞬かせながら吹き出した。


「けど、気をつけなよ。あんただって女の子なんだからちゃんと自覚して、自分自身を大切にしなよ」