弘前公園を出て、観光館のレストランに入る。
珍しい郷土料理をいくつか注文する。
地鶏を具にした蕎麦を頼む。

「貝焼き味噌、うまいっすよ、アツっあふっ」
「ゆっくり食え」

貝焼き味噌は、大きめの帆立貝の殻に、だし汁と味噌、ネギ、帆立などを入れて卵をといたものだ。

「結局、倖太くんがどこで生まれたのかわかりませんでしたね」
「それどころか美香さんは一度も帰ってきてないとさ」
「高校を出てから一度も地元に帰ったりしなかったんですかね？　有名になったのに」
「家族や友達に知られたくない秘密ができたかな」
「じゃあ、子供じゃないですよね。倖太くんは５歳くらいから子役やってたわけでしょう。隠す気ゼロじゃないですか」
「だが何かがあったんだ。殺されて川に投げ込まれるようなトラブルが」

目撃情報も何もない。
水原アヤ以外に、容疑者が浮かばない。

「最後に会ったのは、水原アヤだ。そこは間違いない」

何かがあったんだ。
親友を殺さなければならない何かが。