隣に座って、今度は手を、太腿の上に置いてくる。
肩にもたれて台詞を呟く。

ゆっくり顔を上げた琴音の瞳から、涙が零れ落ちた。

「ちょっと違う?」

お芝居の練習だとわかっていても、胸が高鳴った。
役者って練習でも泣けるんだな。

「どーしたもんかなあ」
「悪くなかったよ。ミサキがユキトのこと好きだってのは伝わってきた。ちょっとドキドキしたし」
何か足りないような気がする、と琴音はぶつぶつ言いながら台本を読み直した。

「ミサキは死ぬほどユキトのこと、好きだったのかなあ」