グラスのお茶に手をつけずに、ぐっと唇を噛んだ。
組んだ手の上にあごを乗せて、琴音は小さく「やっぱ、言えない」と呟いた。

「……そう。イヤなら言わなくていいけど」
「うん。でも、あいつ、しつこくて」


恋愛感情を持ってる相手に対して、親の悪口を言うだろうか……?
普通は言わない。
拒否するついでに、琴音がなにか暴言を吐いたんじゃないだろうか。こいつは人を怒らせる天才だからな。

何かヘンだ。

まあ、いいけど。

「台本、見せてよ。好きでもないのに『好き』の芝居するんだから、役者は大変だな」
「あいつがユキト役を降りたら良かったのに」