後30分しかないのに、まだ家とかマズすぎる!

遅刻したら絶対怒られるのに!

が、学校までの交通手段は徒歩。

チャリ、は最近乗ってないからタイヤの空気が抜けてる。

ここのところ蒼のチャリの後ろに乗ってたしなぁ。

って考えてる場合じゃない!

リュックにかけ袋とタオルを詰めて、矢筒を肩にかけ、耳にはイヤホンを。

大好きな音楽をかけて、家から飛び出す。

夏空の下、学校までの道のりをアタシは全力疾走した。



10時20分、校門前。

「ハァ、ハァ…。
やば、ギリギリセーフ!」

良かった、間に合った…。

弓道場まではもう少し。

よし、大丈夫。

そして息を整え、弓道場の扉に手をかける。

「お願いしまーす」

挨拶をして道場へ入った。

「よぉ、遅刻するかと思ったぜ」

制服姿の蒼がそこに立っていた。

ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべている。

「んなわけないじゃん。
ちゃんと間に合ったし」

まぁ、3分前だけど。

「へいへい。
じゃ、始めっから弓準備しろよ」

「運動着に着替えたいんだけど。
蒼は着替えないの?」

もちろん、アタシも制服姿だ。

「あー、別に良くね?
どうせオレらしかいないんだし」

確かに着替えるのめんどくさいかも。

「じゃ、いっか。
ねぇ、アタシの分も弓張ってー」

リュックからかけ袋を出しながら、蒼に声をかけた。

「自分でやれよ」

「お願い!」

「ちっ、しゃーねーな」

なんだかんだ言って優しいよね。

「ありがとー」

それから礼拝をして、胸当てとかけをつける。

ブランクがあるから練習で4本程射った。

あー、やっぱり筋力落ちてるなぁ。

1本しか中んなかったけど、矢所は固まってるし。

大丈夫かな?

蒼はというと、2本。

まぁ、五分五分ってとこ?

「じゃあ、始めよっか?」

「おう、絶対負けねーから」

四つ矢を持って、射場に入る。

だいたいいつもアタシが始めの合図をしていた。

「はじ…「なぁ」なに?」

いきなり言葉を攫われた。

「もし、オレが勝ったらさ、」

そーいや、蒼が勝ったらどうするか聞いてなかった。

でも、その後に続く言葉がアタシを惑わせるなんて…。

この時は思っても見なかった。

「もし、オレが勝ったらさ、…。
…、が欲しい。」

「え?」