後30分しかないのに、まだ家とかマズすぎる!
遅刻したら絶対怒られるのに!
が、学校までの交通手段は徒歩。
チャリ、は最近乗ってないからタイヤの空気が抜けてる。
ここのところ蒼のチャリの後ろに乗ってたしなぁ。
って考えてる場合じゃない!
リュックにかけ袋とタオルを詰めて、矢筒を肩にかけ、耳にはイヤホンを。
大好きな音楽をかけて、家から飛び出す。
夏空の下、学校までの道のりをアタシは全力疾走した。
*
10時20分、校門前。
「ハァ、ハァ…。
やば、ギリギリセーフ!」
良かった、間に合った…。
弓道場まではもう少し。
よし、大丈夫。
そして息を整え、弓道場の扉に手をかける。
「お願いしまーす」
挨拶をして道場へ入った。
「よぉ、遅刻するかと思ったぜ」
制服姿の蒼がそこに立っていた。
ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべている。
「んなわけないじゃん。
ちゃんと間に合ったし」
まぁ、3分前だけど。
「へいへい。
じゃ、始めっから弓準備しろよ」
「運動着に着替えたいんだけど。
蒼は着替えないの?」
もちろん、アタシも制服姿だ。
「あー、別に良くね?
どうせオレらしかいないんだし」
確かに着替えるのめんどくさいかも。
「じゃ、いっか。
ねぇ、アタシの分も弓張ってー」
リュックからかけ袋を出しながら、蒼に声をかけた。
「自分でやれよ」
「お願い!」
「ちっ、しゃーねーな」
なんだかんだ言って優しいよね。
「ありがとー」
それから礼拝をして、胸当てとかけをつける。
ブランクがあるから練習で4本程射った。
あー、やっぱり筋力落ちてるなぁ。
1本しか中んなかったけど、矢所は固まってるし。
大丈夫かな?
蒼はというと、2本。
まぁ、五分五分ってとこ?
「じゃあ、始めよっか?」
「おう、絶対負けねーから」
四つ矢を持って、射場に入る。
だいたいいつもアタシが始めの合図をしていた。
「はじ…「なぁ」なに?」
いきなり言葉を攫われた。
「もし、オレが勝ったらさ、」
そーいや、蒼が勝ったらどうするか聞いてなかった。
でも、その後に続く言葉がアタシを惑わせるなんて…。
この時は思っても見なかった。
「もし、オレが勝ったらさ、…。
…、が欲しい。」
「え?」