ードンッ

なぜか、アタシは床に押し倒されていた。

アタシの顔の脇には蒼の両手。

足と足の間には、蒼の膝が入っていて動
けない。

無音の中に携帯が鳴る。

「ねぇ、携帯鳴ってる。
出なきゃ。」

「駄目。」

それだけ言うと携帯の電源を落としてしまった。

ここは、アタシの部屋。

床にはアタシがさっきまで持っていた携帯。

目の前には不機嫌そうな蒼。

「なんで?」

「‥なにが?」

蒼は、アタシの耳元で喋る。

声が少し掠れていた。

「なんでキレてんの?
どいて。」

見た事のない顔に声が震えた。

「‥無理、離したくない。」

「蒼‥。」

わかんないよ。

それ以上、何も言えなかった。

だって、蒼が辛そうな顔をしてたから。

なぜだかアタシも苦しかった。

そして胸が痛かった。

ずっと一緒にいたはずだったのに‥。

側にいる蒼が遠い。