ーシーンー
カチッ
弓道場はやっぱり誰もいなくて、静かだった。
「じゃあ、的つけてくるから。」
余りにも静か過ぎて、葵の声にも一瞬ドキッとする。
「オレが的つけてくるから。
お前は、弓張ったり、準備してろよ。」
葵は、何に驚いたのか戸惑いながら、うんと言った。
「蒼が優しいなんて、雪が降る‥。」
「へいへい。」
そこは嘘でもありがとうとか、言えよ。
とか、柄にもなく思ってしまう。
「でも、ありがと。」
ツンデレ?
「おう。」
少し照れた顔を隠しながら、オレは的をつけに外へ出た。
*
「じゃあ、先に外した方が負けな。」
「うん。」
礼拝をして、射場に向かう。
ーシーンー
さっきとは違う、ピンとした空気が漂う。
なんだかんだ言って、オレも相当な負けず嫌いだ。
心の中で思わず、苦笑した。