ーシーンー

カチッ

弓道場はやっぱり誰もいなくて、静かだった。

「じゃあ、的つけてくるから。」

余りにも静か過ぎて、葵の声にも一瞬ドキッとする。

「オレが的つけてくるから。
お前は、弓張ったり、準備してろよ。」

葵は、何に驚いたのか戸惑いながら、うんと言った。

「蒼が優しいなんて、雪が降る‥。」

「へいへい。」

そこは嘘でもありがとうとか、言えよ。

とか、柄にもなく思ってしまう。

「でも、ありがと。」

ツンデレ?

「おう。」

少し照れた顔を隠しながら、オレは的をつけに外へ出た。



「じゃあ、先に外した方が負けな。」

「うん。」

礼拝をして、射場に向かう。

ーシーンー

さっきとは違う、ピンとした空気が漂う。

なんだかんだ言って、オレも相当な負けず嫌いだ。

心の中で思わず、苦笑した。