その瞬間、理性が飛んだ。

葵の香りに酔ったのか、酒に酔ったのか、もうわからない。

頭の中では警告が鳴り響いていた。

魔が差すとはこういう事を言うんだろうか?


‥葵の唇に、自分の唇を重ねていた。

すぐ我に返って離れたが、手遅れだった。

キスしちまった。

葵に。

これがファーストキス?になるのだろうか。

でも相手は気づいてないし、ノーカウント?

いやいや、キスって。

しかも、葵に?

もう、わかんねー。

頭の中でグルグルと自問自答を繰り返した。

結果、一つの答えが出た。

ずっと、モヤモヤしてた事。

この曖昧な気持ち。

ーオレは‥、オレは葵が好きだ。

「マジかよ‥。」

自分で辿り着いた答えに愕然とする。

駄目だ、これ以上こいつと同じ空間にいたら何するかわかんねー。

そう思って、葵を蹴った。

「おい、起きろ。
ベッドに寝ろよ。」

自分でベッド奪った事はこの際、無視。

「んー。
今、何時?」

「明日になる。」

つまり、真夜中。

葵はムクっと起き上がった。

「ふぁー、うん。
ベッドに寝る。」

半分、寝ぼけてんのかオレがベッド奪った事なんて忘れてる。

モゾモゾと布団に潜っていた。

「‥ごめんな。」

オレは卑怯だ。

わざと小声で言った。

聞こえないように。

「なんか言った?」

「いや、何でもない。
おやすみ。」

そう言って、部屋から出ようとした。

「どこで寝るの?
この部屋で寝てもいいよ?」

いやいや、オレが無理だから。

襲うぞ、このヤロー。

「リビングのソファで寝るから大丈夫。」

「多分、翠が寝てるよ。」

「‥。」

どーしよ‥。

「半分、ベッド貸してあげる。」

さらに!?

「‥マジで?」

「この間も一緒に寝たじゃん。笑
今更でしょ?」

‥マジで襲うかもしれない。

「床でいーわ。
暑いし。
とりあえず、風呂入ってくるから。」

この熱を冷まさなければ。

落ち着け、オレ!

「ん。
じゃあ、おやすみ。」

絶対、寝れねーよ‥。

これからどーしたらいーの!?