本入部が決まり、一週間がたった。

いつものように、四人で帰ろうと部室を出た。


すると、誰かに声をかけられた。

「あ、あの、蒼先輩!」

「‥なに?」

そこには、女が二人立っていた。

一人は、見たことあるような顔だ。

多分、1年の後輩だと思う。

「蒼。
アタシたち部室で待ってるから、話して来なよ?」

名前を思い出せず悩んでいたら、葵に話しかけられた。

しょうがねーな。

マジで何なんだよ。




「あの、蒼先輩って葵先輩と付き合ってるんですか?」

後輩ではない女が、オレに話しかけてくる。

「いや。
付き合ってないけど?」

幼なじみだし。

「じゃあ、好きなんですか?」

なんで、オレがコイツの質問に答えなきゃいけないんだよ。

「好きじゃねーよ!
むしろ、嫌いだし!」

思った以上に、声が大きくなった。

理由もなく、イライラする。

「‥じゃあ、なんで葵先輩だけ名字じゃなくて名前呼びなんですか?」

「葵は、幼なじみだからだよ。
それ以上でも、それ以下でもねーから。」

頭の中は混乱していた。

一番驚いたのは、声が意外と冷めていたこと。


葵のことが好きか、

なんで名前で読んでるのか、

ずっと一緒だからそんなこと考えたことなかった。


そこで気づいてしまった。

そうだ、葵とはずっと一緒だった。

しかし、これからもずっと一緒だとは限らない。

そう考えると、胸が苦しくなった。

オレにとって、葵はなんなのだろう。


ーこの感情を、オレはまだ知らない。