本入部が決まり、一週間がたった。
いつものように、四人で帰ろうと部室を出た。
すると、誰かに声をかけられた。
「あ、あの、蒼先輩!」
「‥なに?」
そこには、女が二人立っていた。
一人は、見たことあるような顔だ。
多分、1年の後輩だと思う。
「蒼。
アタシたち部室で待ってるから、話して来なよ?」
名前を思い出せず悩んでいたら、葵に話しかけられた。
しょうがねーな。
マジで何なんだよ。
*
「あの、蒼先輩って葵先輩と付き合ってるんですか?」
後輩ではない女が、オレに話しかけてくる。
「いや。
付き合ってないけど?」
幼なじみだし。
「じゃあ、好きなんですか?」
なんで、オレがコイツの質問に答えなきゃいけないんだよ。
「好きじゃねーよ!
むしろ、嫌いだし!」
思った以上に、声が大きくなった。
理由もなく、イライラする。
「‥じゃあ、なんで葵先輩だけ名字じゃなくて名前呼びなんですか?」
「葵は、幼なじみだからだよ。
それ以上でも、それ以下でもねーから。」
頭の中は混乱していた。
一番驚いたのは、声が意外と冷めていたこと。
葵のことが好きか、
なんで名前で読んでるのか、
ずっと一緒だからそんなこと考えたことなかった。
そこで気づいてしまった。
そうだ、葵とはずっと一緒だった。
しかし、これからもずっと一緒だとは限らない。
そう考えると、胸が苦しくなった。
オレにとって、葵はなんなのだろう。
ーこの感情を、オレはまだ知らない。