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店からの帰り道。
「マジかー。
あの二人、付き合ってたのか‥。」
「そうみたいだね。
知らなかった‥。」
葵も呆然としている。
桜汰は佐伯を送ると言って、一緒に行ってしまった。
だから、必然的にオレと葵は二人っきりだ。
あの二人が、周りやオレらに言わなかった理由はいくつかあった。
一つ目、桜汰がモテるから。
二つ目、部活に私情を挟みたくないから
。
三つ目、オレと葵に迷惑かけたくないから。
多分、三つ目が一番の理由だろう。
要するに、オレと葵まで付き合ってると思われないため、ってことだ。
まぁ、これ以上葵や佐伯が女に目をつけられても困るしな。
喋りながら、歩いていると家に着いた。
なんか、家が暗いんだけど。
ー♪〜♪♪〜ー
そのとき、携帯が鳴った。
『あっ、蒼?
そろそろ、帰ってくる頃だと思ったわ。今、家?』
「いや、家の前だけど?
どこにいるんだよ。
家の中、暗いし。
碧(みどり)もいないみたいなんけど。」
碧は、中3のオレの妹だ。
『あぁ、碧なら隣りの家よ。
お父さん、今日から3ヶ月くらいイタリアに出張なのよ。
お父さんだけじゃ何もできないから、お母さんもついて行っちゃった♪」
いやいや、ついて行っちゃったって何だよ。
オレらはどーすれば良いんだよ。
「隣りの家に、アンタたちのことは任せたから。
荷物運んで、そっちに3ヶ月お邪魔してね。
電気水道はもう止めちゃったから。
じゃあねー。」
マジかよ‥。
葵ん家に3ヶ月も?!
「ねぇ、とりあえず家に入ろうよ。
よくわかんないけど、碧もアタシの家なんでしょ?」
「あぁ、うん。」
家の前で悩んでてもしょうがないしな。