「そっか。だよな、はは……」

「寺本くん……?」

「……」


 寺本くんは苦笑いを浮かべた後、真剣な眼差しを私に向けた。


「――愛美、」

「!」


 今……今、名前で!

 私のことを“里倉”じゃなくて“愛美”って……!

 一気に顔が熱くなるのが分かった。

 どう反応したらいいのか分からなくて、だけど寺本くんの目から視線が離せない……。


「付き合っているのに、お互い、名前で……呼んでねェなって思って、さ」

「……」

「もしかして付き合っていないんじゃないか、なんてバカなことを思ってみたりもして」

「そんなこと……」

「そんなことを考えているうちに、イライラしちまって。……好きなのは、俺だけじゃないのかって」