すると、里倉は俺の腰に手を回した。


「私の方こそ……寺本くんに勘違いをさせちゃってごめんね」

「里倉は悪くねぇ!」

「ううん、私も悪いの。だから……」


 ――もう、謝らないで。


 優しい声音でそう言われ、俺は謝罪の言葉を紡ぐのをやめた。

 そっと離れ、里倉の顔を見る。

 里倉は満面の笑顔だった。

 俺の冷たい態度に対しては、もう気にしていない様子の笑顔だった。