「………え」


右手を私に思い切り払いのけられ、もっと呆気に取られる冴城君の真ん丸な目が、私を凝視してるのを感じる。


「………がう」


「えっ?田薮?」


「違う……」


プツプツと切々に零れる声は、上手く冴城君には届かなかった様だった。


「え?あの………何て言ってんだ?」


冴城君がヒョイッと腰を屈めて私の顔に自分の耳を近づけたと同時に、水滴が図書室の床に落ちて行った。


私の………涙だ。


「私は……っ!!光じゃないっ!!」


気づけば涙でグシャグシャに歪む視界のまま、目の前の冴城君に怒鳴っていた。