「あの場所へ行く。白良が好きと言っていた…あの野原に」
白露は被衣をかぶると、白良を抱き上げ表へ出た。
すると、丁度やって来た和矢と鉢合わせした。
「あ、旅人さん、こんにちは」
「何だ…?」
「白良に会いに来たんですよ。三日前から仕事で隣村に行ってて来れなかったから。あれ?白良…どうしたんですか?」
白露の腕の中でぐったりとしている白良に気づき、問い掛ける。
「…遅かったな」
白露は一言吐き捨てると早足にその場を去った。
「あ!待って下さいよ!白良をどこに連れて行くんです!?」
和矢の声が遠くに聞こえる。
白露は人間ではありえない素早さで村から出て行った。