「我はしばし外にいる」
椿が帰るなりそう言い出した白露。
白良も千尾丸も意味がわからなかったが、止める理由もないので白露の好きにさせることにした。
家路を歩く椿。
機嫌が良いのか鼻歌まじりに歩みを進める。
その時だった。
「女…」
低い声が聞こえたと同時に、口を手で苦しいくらいに塞がれた。
「っ!?」
訳がわからず暴れる椿。
彼女はそのまま抱きかかえられ、村から外れた森の奥に連れて来られた。
「女…正直に答えろ」
薄暗い森の中で椿は異形のものを見た。
長い銀髪に金色の瞳。
被衣がパサリと地に落とされて現れた、頭から突き出る二本の角。
真っ赤な着物を纏った、妖し。
彼は問うた。
「そなたが白良の父親を殺した…そうであろう?」
「な、何のこと…!?」
震えながらも気丈に答える。
「白を切るつもりか?そなたからは血の臭いがする。ついでに邪悪な気もな…」
白露がこの村から感じた血生臭さと椿の臭いは同じものだった。
ゆえに彼は問う。
「答えよ。白良の父親を殺したのはそなたか…?」