「やりかねんな…」
二人の会話を耳にしても現実味がわかない白良はもう一度聞いた。
「本当にお父さんが出てきたんですか!?しかも、枯れ井戸から!?」
「落ち着け、白良」
白露がなだめると千尾丸が言った。
「村人から聞いた情報によると、白良の父親は右頬に目立つ黒子(ホクロ)がありやすね?」
「うん…」
「死体にも同じ位置に大きい黒子がありやした。あれは間違いなく白良の父親です」
これで決定的だった。
白良は父親の死を受け入れる覚悟を固めた。
「死因はなんだ?」
「頭を打って死んだみたいですよ。滑って枯れ井戸に落ちて頭打って死んだんですかね…」
「自殺かも…。罪の意識があって、自分から枯れ井戸に落ちて…それで…」
「あるいは、他殺か。被害にあった娘か、それを憐れんだ誰かが…」
どれも考えられるため、結論が出ない。
三人がぐるぐると悩んでいる間に時は経ち、夕方になった頃だった。
玄関の戸が叩かれた。