白露は歩いて村まで到着した。
そして真っ直ぐ白良の家に向かう。
彼女の家の入り口まで来て、中の話し声に気づいた。
(誰か来ているのか?)
入ろうかどうしようか迷っていると突如、白良の悲鳴が耳に届いた。
(白良!?)
少し開かれた戸の隙間から中をうかがう。
目に映ったのは男に襲われている白良の姿。
無意識に指の骨を鳴らす白露。
怒りで獄卒の血が騒ぐ。
飛び込んで行こうとした時、白良が叫んだ。
「やあぁ!!和矢くん!助けて!」
この言葉に固まる。
(和矢…?)
白露は助けることも忘れ自問した。
(我は、必要ない…?)
己ではなく和矢を呼んだ白良に愕然とする。
(…よく考えれば、当たり前だ。幼なじみと、数日の付き合いの我。白良がどちらを求めるかなど明らか…)
助ける気も失せてしまった時だった。
非常に小さく、か細い声であったが、彼にははっきりと聞こえた。
「…しら、つゆ…」