「団子ですか~!うまそうですね~!」
任務から戻ってきた千尾丸は開口一番団子を褒めた。
そんな食いしん坊狐を捕まえ、今日の成果を聞き出す白露。
しかし手掛かりは無しという報告が返ってきた。
「明日も探してこい」
人(狐だが)使いの荒い相棒に溜息をついていると、白良が団子をすすめてきた。
「どうぞ。和矢くんの家で作ったお団子はおいしいんですよ!」
「んじゃ、遠慮なくいただきや~す」
まぐまぐとお団子を食べる千尾丸。
その光景を微笑ましく眺めながら、白良もいただこうとしたが、ふと手を止めた。
白露が座ったまま目を閉じている。
お団子に手を伸ばす気配はない。
「白露さんは、お団子嫌いですか…?」
恐る恐る尋ねる白良に、目を開けることなく白露は首を横に振った。
「我はいらぬ。そなた達で食え」
心配そうに見つめる白良をよそに、彼は別のことを考えていた。
(あの顔が、頭から離れぬ…)
野原で振り返った彼女が見せた、柔らかい笑み。
どの花よりも綺麗に咲いていた白良。
泣き顔も微笑みも白露の心を少しずつ揺さぶる。
(なぜ、気になる…?)
心で己に問うてみる。
(何なのだ?理解できぬ、この感情は…)