素直な感想を述べられて白露は呆れた。
「これでも我は地獄で冷酷と名高いのだ…。上辺に騙されるなよ」
「んもう~。綺麗って褒められて嬉しいくせに~!」
横で茶々を入れる千尾丸の頬をギュムッとつねりながら、白露は尋ねた。
「我が恐ろしくないのか?」
すると、白良は悲しげに微笑んだ。
「明日、村を追い出される方がよっぽど恐いです。いっそ、地獄でも良いから…居場所がほしい…」
再び泣きそうな顔する彼女に白露は冷たく言った。
「生憎と、地獄はいつも亡者どもで溢れかえっている。そなたの分の空きはない」
地獄にも居場所はないと断言され、白良は俯いた。
「私…荷物をまとめようかな…」
弱々しく紡がれた言葉。
「そうすれば、いつでも出ていける…」
「白良には母親はいないんですか~?」
千尾丸が疑問に思っていたことを尋ねると、彼女は小さく頷いた。
「二年前に病気で…。思えばお父さんがあんまり帰らなくなったのも、お母さんが亡くなってからだったな…」