「ありがとう。悠貴のことそんな風に思ってくれて。あっ、美晴ちゃんなら知ってる?悠貴、いつも会社帰りにどこかに寄って帰ってるみたいなんだけど・・・」


詰め寄るように言われた言葉。私もずっと気になってた。今なら冴子さんに聞けるかなと思っていたのに逆に聞かれてしまった。


「・・・すいません。いつも定時で帰られるので私も知らないんです」


「そう。聞いてもはぐらかして答えてくれないのよね。ってあの子いつまでタバコ吸ってるのかしらね、悠貴」

換気扇の前で立つ課長の手にタバコは握られていない。相変わらず視線は携帯。タバコを吸い終わってもまだあそこでゲームをしていたんだ。

冴子さんに呼ばれ、リビングに戻ってくるも課長が腰を下ろしたのはお父さんの隣。しかも会話をすることもなく、二人でテレビに釘付け。正直、なんで集まっているのかよく分からない。


「なんかいいわね。こういうの。無理せずにそれぞれが好きなことをやってるけれど同じ空間にいる。悠貴と二人じゃ感じなかったけれどリビングっていい場所よね」



嬉しそうに微笑む冴子さん。そっか。私は、中学のときからお母さんは入退院を繰り返しで、お父さんは仕事があって一人でいることが多かった。


だから寂しくて、部屋に閉じこもることが多かったからわからなかったけれとこうやって何も無理をせずに一緒にいる場所が『家族の団欒の場所』なんだ。



「ずっと、こういう時間が続けばいいわね。美晴ちゃんも遠慮しないで気を抜いて好きに過ごしてね」




「私も好きなことしよう」と言って課長を押しのけお父さんの隣に座る冴子さん。渋々そこを退く課長と目が合った。



なんだかお父さんがイチャイチャしているのは恥ずかしい。課長もそう思ったのか私をコンビニでも行こうと誘い出してくれた。