ポンポンと頭を撫でられる。まだ小さい頃、お母さんがよく私にしてくれた。幼稚園で友達と喧嘩して俯いている私を元気付けてくれるために。懐かしくて唯野さんがお母さんのように思えてつい・・・

「・・・お母さん。ってごめんなさい。私ってば何、言ってるんだろう」


「いいの。私だって美晴ちゃんのこと自分の娘のように思ってるんだから。だから、いーっぱい甘えてね」


落ち着いたら戻っておいでね。とデスクに戻っていった唯野さん。唯野さんに言われた言葉をゆっくり頭の中で整理する。私は私の片想いでいいんだ。


たとえ、それが高校生のように幼い片想いでも。駆け引きも何も出来ずただ見つめてるだけでも。


それでもいいんだ。


「体調、大丈夫か?無理なら早退してもいいけど」

唯野さんが戻って五分くらい経つと、リフレッシュルームの扉が開く。心配そうに顔を覗かせた課長の姿に嬉しくなる私は単純だな。本当、日に日に課長のことを好きになっていく。


「だ、大丈夫です。すぐ戻ります」

ガタッと立ち上がる私にゆっくり近づいてくる課長。テーブルを挟んで私の目の前に立った。

「・・・佐伯、一瞬だけ目瞑って」

「えっ?目?目ですか?」

「そう、早く目、瞑って」