「嫌いじゃありません！」

自分でも驚くほど大きな声が出た。当然、課長も驚いている。だけど、嫌いだと思っているなんて思われたくない。言わなきゃ、今、言わなきゃ私の思い。


「確かに怖いとは思っていました。だから必要以上に近づかないように距離を置いていました。だけど、上司じゃない課長をたくさん知って、私・・・」


わかって欲しくて伝える言葉。
届いてほしいから力が篭る。



だから必然と潤んでいただけの瞳は涙で溢れる。


嫌いじゃない、嫌いじゃない。
むしろ、あなたが好きなんです。



「俺さ、本当は怒鳴るの苦手なんだよね。いつも佐伯を怒鳴った後自己嫌悪。言い過ぎたなとか、落ち込んでないかなとか。でも、怒る人間がやっぱり組織の中には必要でさ。俺は怒鳴ることも仕事の一環だと思ってやってた。だから、佐伯が仕事抜きで俺を見て少しでも印象が変わったのなら良かったよ」



やっぱり大事な部下には嫌われたくないからさ。そうはにかんで言う課長。


大事な部下か。そうだよね。私は大事な部下。課長には届かない。



それでもやっぱり再婚を認めて兄妹になんてなりたくない。たとえ今は大事な部下なだけだとしてもやっぱり私は課長と結婚したい。




課長に好きになってもらいたい。