街灯と星明かりの下をゆっくりと課長と並んで歩く。でも、何を話せばいいのかわからない。
再婚を認めてあげたほうが、お父さんも冴子さんもすぐに幸せになれる。

あんな幸せそうなお父さん、本当に久しぶりに見た。お母さんといるときのようで切なかったけれど、お父さんは冴子さんに恋をしている。

そのお父さんの恋を、本当に私のつまらない意地で反対してもいいのか。もちろん、今は意地だけじゃない。課長と義兄妹になりたくないなんていう勝手な理由もある。

どうして、課長は冴子さんの再婚に反対ではないのに、私の嘘をつき通せと言うのだろう。


「どうした?二人の姿を見て悲しくなったのか?お父さんを取られたみたいで」

「私、お父さんの隣はお母さんでいてほしい。そう思ってました。だから、あんな嘘までついてでも再婚してほしくないって思ってたんです。でも、幸せそうでした、二人」

「そうか。じゃあ今はもう再婚を反対する理由もなくなったってことだな」

そう言われ、黙ってしまった。反対する理由がない。そんなことない。反対したくないけれど義兄妹になりたくない。好きになってしまったから。

「俺は、冴子と徹さんのこと反対じゃないよ。でも、もしまだ悩んでるならさ、俺は佐伯に合わせる。それに怖くて嫌いだと思ってる奴と結婚なんて嫌だろうしな」