コクンと頷く。それで私は課長のことを意識するようになった。今では緊張してうまく話せないくらい好きかもしれない。


「美晴、お父さんは美晴の幸せが一番だ。だから、美晴が本当に悠貴くんを好きで結婚したいというならそれは大歓迎するよ。でも、お互いのためにならない結婚ならダメだ。再婚も認めてもらう。義兄妹になってもらうよ」


お互いのためにならない結婚なら再婚を認めてもらう。お父さんの言葉に頭が真っ白になった。その通りだったから。全部見抜かれていたんだ。私が吐いた嘘も。課長がそれに合わせたことも。


「でもね、美晴。お父さんはチャンスだと思ってる。最近の美晴は悠貴くんに惹かれてるんだなって思うし、悠貴くんだって美晴を気に入ってはくれてる。嘘から恋が始まることだってあるんだよ。だから、二人の嘘から始まる恋がこれから甘い恋になればお父さんは幸せです」


以上とさすがに自分で言った言葉に恥ずかしくなったのかダイニングテーブルに置かれたコーヒーを口にして新聞で顔を隠すお父さん。

「でも、もしそうなるとお父さんたちの再婚は・・・」

私がそう言い出すと、「心配しなくてもいい」とただそう言って、またコーヒーを飲んだ。「心配しなくてもいい」の意図がもちろん、この時の私はなんなのかわからないまま、気恥ずかしくなってこの話はお互い、そこでストップして。