メニューとにらめっこしていると、比嘉さんが店員さんを呼んだ。どうしよう、まだ何もきめていないのにと、慌ててお酒のメニューに目をやる。

「決まった?佐伯ってお酒強いのか?」

「全然です。ビールは苦くて飲めなくて。普段はあまり甘党ではないんですが、カクテルの方が好きですね」

「そっか。じゃああんず酒はどうだ?梅酒も美味しいけどあんず酒もなかなかいけるよ」

「あんず酒。飲んだことないです。それにします」

注文を取りに来た店員さんに、ビールを三つとあんず酒を頼んだ。食べ物は、比嘉さんと唯野さんが適当に決めてくれて頼んでくれたけれど、どうしてもメニューを見て気になった揚げ出し豆腐だけは追加注文をした。

「では、お疲れ様です」

先に飲み物が運ばれてきて、みんなで乾杯。勧められたあんず酒はロックで。初めて頼んだけれど、 甘すぎず好きな味。これはハマりそう。

「あんず酒どう?」

「美味しいです。ハマりそうです」

「よかった」と課長は突き出しを口にした。私も同じようにゴマ豆腐を食べた。それが美味しくて二人で「美味しい」と笑い合っていると、視線に気づく。唯野さんと比嘉さんがいること今、すっかり忘れてた。