そう声を掛けて来たのは、隣の席に座るパートの唯野さん。唯野さんは高校生の娘さんがいる韓流大好きな四十五歳。恋バナ大好きでよく彼氏のいる娘さんの話をよく聞かされる。


その話を聞いて、恋をしてるなんて、羨ましいななんて思っていたけれど、まさか、自分に気になる人ができるなんて。


しかもそれが、数日前までは苦手だと思っていた鬼上司の時田悠貴課長だなんて。数日前までの私は思いもしないだろうな。


それはそうと、私、そんなに態度に出ていたのだろうか?「なんのことですか?」ととぼけてみたけれど、唯野さんは、私の言葉なんて無視して、うんうんと頷いている。


「やっと、美晴ちゃんも課長の良さに気がついたのね。長身で端正な顔立ちだし、ノンフレームのメガネもよく似合ってるわよね。それに声!あの甘い声がたまらないのよ。あーっ、私が後、二十若かったら確実に狙ってたわ」


そう、言われてふと課長席に目をやった。今までは鬼上司としてしか、見ていなかったし、気になるようになってからは、もう課長自身が気になると思っていたけれど、そういえば、かなり外見も素敵かもしれない。