「好きになってもらえるなんて本当に思わなかった。だからいざとなれば結婚だけでもいいとすら思ってたんだ。それでも美晴を手に入れることができるからさ」


「課長・・・」


「むしろその方が不安は少なかった。美晴が俺を好きだと言ってくれたとき、嬉しさや驚きと同時にあの時の不安が一気に蘇ったんだ。幸せの絶頂から崩れ落ちる瞬間が。だからすぐに美晴に応えられなかった。ごめんな」



だから、あの時私にすぐ答えをくれなかった。怖かったんだ。でも課長はちゃんと好きだと言ってくれた。前に進んでくれた。私もその気持ちに応えたい。そして、ずっと隣にいたい。


「・・・悠貴さん、そろそろ顔を見てお話したいです」


あえて、課長ではなく、悠貴さんと呼ぶ。これからは課長ではなく、悠貴さん。私たちは恋人なんだから。


「うん。俺もそう思った。じゃあ美晴、頭を上げてくれる?」


いい大人なのに顔を見て話すことすらが恥ずかしいなんて、本当に高校生みたい。顔を見るのは恥ずかしいのにしっかりとお互いの身体は密着してるのに。

大人なのにドキドキしてしまう。
それでもやっぱり悠貴さんの顔が見たい。


「美晴、もう一つ、これは俺からのお願い。だけど、これは美晴が許可してくれても、透さんや冴子の許可をもらわなきゃいけないことなんだけど」


視線を交わした。すごく熱く、強い眼差しと。それだけで体が火照るのに、彼は、最上級に熱い言葉を私に落とした。


「美晴、俺たち義兄妹にならない方法があるんだ」