今、何を言ったの?


課長の言葉に瞬きを繰り返していると、目の前で課長が真剣な眼差しを向ける。戸惑いながらも視線を合わせると優しく微笑みを見せてくれた。


今は会社でましてや勤務中。それなのに、抱きつきたくなる衝動に駆られる。でも、ダメ。


私達は兄妹になるんだから。



「俺は離すつもりも最後にするつもりもないよ」



「な、何言ってるんですか。お父さんと冴子さんが結婚するんですよ。だったら私達は」


「兄妹になんて絶対にならない。なるつもりもない。ちゃんとお互い、向き合おう。本当なら今も離したくないけど今日、仕事が終わったら話したいことがある」


至近距離と強い眼差しに心臓が持たない。自分の心音が聞こえるなんて相当ドキドキしている。また私に魔法の言葉を掛けるんだから。こんなのズルい。



狙っているかのように、弱いポイントをついてくる。私は、ただ立っているだけで精一杯なのに、掴まれた腕も視線も離そうとせず、余裕そうな課長を見ると悔しい。


やっぱり私は、この人にいつだって翻弄されてしまう。兄妹にならないなんてそんなの無理に決まっているのに。