気まずい。こんなところに二人で残されてとても気まずい。早く立ち去ろう。そう思って、課長の横を通り過ぎるはずだった。


「ちょっと、来てくれないか」


強く腕を掴まれ、そのまま歩き出す課長。離そうとしても離れない。



「あの、課長。離していただけませんか?」



「・・・離すつもりないって言っただろ?」



辿り着いたのは第二資料室。鍵を開けると課長は周りを確認した後、中に入り鍵を掛けた。



「あ、あの・・・」



腕を掴まれたまま壁に身体を押しやられる。強くて真剣な眼差しに目を逸らすことも出来ない。



「・・・最後にキスしておこうか?佐伯」



そう言って触れそうになった唇。でも、それは唇に触れることもなく頬を掠めるだけだった。そして、そのまま課長はあたしの耳元で呟いた。



「・・・最後になんてするつもりない」