「バカって傷口に塩、塗らないでよ」



今日のランチは私が奢るつもりだったから少し離れた喫茶店にやってきた。ここなら会社の人もいないし、気軽に話せる。それにお値段もリーズナブル。



琴美はナポリタン。私はサンドイッチを注文した。運ばれてくる間、ずっと琴美の説教は続いた。



「バカにバカって言って何が悪いのよ。バカよ、バカ。好きなんでしょ?なのに、なんで親のために諦めなくちゃいけないの?おかしいでしょ」



「・・・お父さん、泣いて喜んでた。やっぱり冴子さんが好きだからそれを形として残したかったから嬉しくて何度も私に、お礼言ったんだ。私はそこまでの気持ちじゃなかったから仕方ないよ」



そう、軽く笑いながら話していると、サンドイッチとナポリタンが運ばれてきた。琴美を心配させないように、空元気でサンドイッチを無理やり口に入れる。でも、食欲なんてない。ただ、いつも通りにしていないとこの選択を後悔しなくちゃいけなくなる。


それだけはしたくない。選んだのは私。だから笑顔で二人を祝福してあげたい。



「・・・ねえ、その気持ち、ご両親は知ってるの?なんだか、聞いてたらご両親が結婚したいって言ったのは、あんたが最初に反対したからじゃないの?」



琴美の思いがけない発言に、ハッとした。確かに、私は最初、二人の再婚に反対していた。でも、それは今とはまったく違う理由。


「本当に早とちりなんだから」