「バカじゃないの!それでいいの?」



結局、あの後課長は一度も口を開かなかった。それが課長の答えだと思う。それで良かった。課長にとっての一番は冴子さん。その冴子さんの願いを叶えてあげられるんだ。異存があるはずがない。



あの日から五日後の今日、お父さんは冴子さんと一緒に、病院に行って検査を受けている。本当なら娘の私が行くべきなんだろうけどお父さんの望む相手は私じゃない。



もうお父さんは私のお父さんというだけじゃない。冴子さんの旦那さんになる人。そして課長の義父になる。



会社でも課長と会うことはなかった。でも、この研修が終われば私は、経理課に戻る。そのときにはもう、私たちは義兄妹になっているのかもしれない。早くそれまでには断ち切らなくてはいけない。こんな思い。



その日のお昼休み、久しぶりに報告を兼ねて琴美をランチに誘い、全てを話した。辛かったねって優しく慰めてくれると思ったのに降ってきた言葉はバカだった。