「二人の結婚に反対するつもりは毛頭なかった。悠貴も静佳ちゃんのご両親に挨拶をして結婚のお許しを貰えてたの。二人で結婚式場の見学なんかも行って本当に幸せそうだった」




でもねと冴子さんが唇をキュッと噛みしめる。あたしの手を握る力もさっきとは比べものにならない。その表情は悲しみというよりはやり切れない怒りに満ちているように見えた。




「トントン拍子に式場も決まり、迎えた結納の日、彼のご両親が頭を下げたの。『ここまで来て本当に申し訳ないけれど結婚を保留にしてほしい』」




静佳さんの家は旧家の分家だった。だからと言って特別なことはなく悠貴さんが片親だといっても普通にそれを受け入れてくれた。逆に父親がいないのによく頑張ってきたと。


静佳さんの父親は自分を父親だと思ってくれてもいいとまで言ってくれたらしい。そんな風に好かれていたからこそ、突然の申しだてに悠貴さんも冴子さんも動揺が隠しきれなかったと言う。


ただ事の事態を先に聞かされていたであろう静佳さんはその言葉に涙を流し始めた。