最初から申し出を快諾してくれる彼女に好印象だった冴子さん。もちろん、会った瞬間にこの子がお嫁さんなら喧嘩も少ないかなと思ったらしい。



肩より少し長めの黒髪ストレート。挨拶もしっかりできて、本当に育ちのいいお嬢さんだと益々、冴子さんは静佳さんのことが気に入った。



正直、そんな素敵なお嬢さんとどうして結婚できなかったんだろうという気持ちとその人の話を聞けば聞くほど自分には敵わないと思わされる。



課長のことは好き。本当に大好き。誰にも渡したくないよ。だけど、もし2人が嫌い合って別れたわけじゃなく、思いあったまま別れてしまったのなら、あたしはそこに入る隙間すらない。




「二人は順調に恋人として付き合っていき、3年目の記念日に悠貴からプロポーズをしたの」



頭が割れそうな聞きたくないフレーズ。分かってる。婚約者なんだからプロポーズするのは当たり前。


だけど、やっぱり好きな人が他の女性にプロポーズをしたなんて辛いし、苦しい。美晴ちゃん大丈夫?と気遣う冴子さんがあたしに小花柄のハンカチを渡してくれた。


ああ、聞きたいって言ったくせに泣くなんてバカでしょ、あたし。