「でも、二人とも、俺の迫真の演技を信じているだろうし、今更、嘘でしたなんて言えば、確実にがっかりするだろうし、再婚したあともギクシャクするだろうな。冴子とお前は」

「あれは、課長が!」

「人のせいにするのか?俺はお前が不利にならないように助け舟を出しただけだ」


一時間前、私のとんでもない発言に被せるように私と結婚したい発言をした課長。言い出した私があわあわと動揺しているというのに、この課長、サッと私の隣に移動し、肩を抱いてきたのだ。


「徹さん、冴子。黙っていてすみません。実は、俺たちも付き合っていて結婚を考えていたんです」


「そ、そうだったのか?でも、義理の兄妹は・・・」


「そうよ、悠貴。義理の兄妹は・・・」


まただ。そう言えば二人も言いかけた言葉を突然やめてしまった。あれは、何だったんだろう。義理の兄妹がって。でも、そんなことよりまずは訂正。私は課長と付き合ってはいないし、当然、結婚なんてありえない。

「あ、あの、お父さん。いたっ」


口を開こうとすると、肩を抱かれている腕に力を込められた。グッと睨みつけようとしたら、逆に睨みつけられた。うっ、この目。いつも怒鳴られてる時の目だから逆らえない。


「いやっ、そ、そうだったのか。悠貴くんなら美晴を任せられるなあ。安心、安心」



いやいやちょっと待ってよ!おかしい、おかしいから!そう言いたいのに威圧感が半端なくてとてもじゃないけれど口を挟めなかった。