だからあたしは逃げた。課長から。


琴美には申し訳ないけれど言い訳に使わせてもらった。お父さんには琴美が失恋してしばらくは落ち込んでるから一緒にいてあげたいと嘘を吐いた。


お父さんは琴美のことを知ってるし、よく遊びに来てくれてたりもしたから快諾してくれた。課長にもお父さんから話してもらうように頼み込んであたしは今、琴美のところに逃げ込んでいる。


臆病だな、弱虫だな。ワガママだと思う。最初は課長のことなんて鬼だとしか思っていなかったのにいろんなことを知って180度見方が変わった。


自分が大好きになったからって相手にもそう思って欲しいなんてどこまでも乙女思考なんだろ。



「で、それでいいの？美晴は」




「だって聞きたくないんだもん。まるであたしとは義務で結婚するみたいで自分の恋が実らなかったから諦めるために結婚するみたいで嫌なの」