きっとあのネクタイに決まってる。




課長がよく付けていて一番似合ってるあのネクタイ。課長のことをちゃんと分かってて似合う色を知ってるシズカさんはきっと・・・




ファッションビルを走り回る。




ネクタイなんて今まで気にかけたことがないからどこに売ってるのかわからない。それでもようやくたどり着いた紳士服のフロア。そこでネクタイを見つけた。



「これも違う。これも違う」




手に取るネクタイはどれもあのネクタイには敵わない。どれなら課長に似合うの?どれならあのネクタイに勝てる?



時間を掛けて選ぶも気に入らない。それなのに時間は待ってくれない。



グラタンだって作らなくちゃいけないのに。結局、ヤケになったあたしは手に取ったネクタイを全てレジに持って行った。