週末までの私は、念入りにシナリオを作り、頭の中で何度もそのシチュエーションを描きながら過ごした。

お父さんは、私がこんなことを考えているとは知るよしもなく、機嫌のいい私にご満悦。少しは申し訳ない気持ちもないわけじゃないからと、お父さんの好きなカレーを作ったらそれも再婚のお祝いだと勘違い。

でも、それも今日まで。大丈夫。お父さんにはお母さんがいるんだから、他の人はいらない。


そして、迎えた再婚相手なる敵と対決の当日。七月十七日、金曜日。朝から仕事もそこそこに、私の頭の中はシナリオ一色。

対決場所は、普段は行かないちょっとオシャレなレストラン。パスタランチですら二千円は超えるお店の名前を聞かされて、ますますムッとした。お父さん、そんないいところを顔あわせ場所に選ぶなんて。


でも、さすがに潰すとはいえ、いつも着てるような服装では行けない。仕事帰りに直接向かわないと間に合わないから、本当は不本意だけれど、清楚を心がけて白の半袖ワンピースにした。

「はっ?!もしかして、そんなくだらないことを今日まで考えてたの?」


お昼休み、お弁当を食べた後、琴美が今日のことを言い出すから、話すつもりはなかったけれど、琴美にだけは話すことにした。


「くだらないって何よ!だって、これならお父さんが再婚しなくても済むんだよ。それにあわよくばイケメンの彼氏、いや旦那様ができるかもしれないし」


「あのね!そんなにうまくいくわけないでしょ。イケメンなら彼女がいるだろうし、初対面の人間にそんなこと言われて誰がはい、わかりましたなんて言うのよ。そんなのただの恥さらしなんだからやめときなさい。お父さんだってそれならまだ、再婚反対されるほうがましよ」