「全く、あいつ、な、に、考えてんだよ!」



課長が汗を流しながら、息を切らして怒号を吐く。確かにあれにはびっくりした。


課長が助けてくれて事なきを得た今日の午後のあの事件。私が戻ると唯野さんが、課長はあの人の上司に直訴すると課を出て行ったと教えてくれた。


そして、しばらくした後、戻ってきたとき課長は安堵の表情を浮かべていた。だからてっきりあの人の上司がきつくお灸を据えてくれたものだと私は勝手に安心していた。それなのに。


定時になり、チャイムと共にぞろぞろと課を出て行く人たち。今日は早めに帰り支度を済ませ急いで更衣室に行って、着替えを済ませなくてはいけない。


「十五分以内に会社の裏口に来ること」


約束と共に取り付けられた条件。いつもは仕事が終わってから唯野さんたちと楽しく更衣室で着替えながらおしゃべりをして帰る。



でもさすがに今日はそんなことをしていたら確実に遅くなってしまう。少しでも早く更衣室に行こう。唯野さんたちに「今日は急ぐので先に行きます」と声を掛けて一目散に更衣室に向かい、着替えを済ませた。